FabLearn Taiwan 2016

こんにちは、ゆうかです。今、私は日本へ帰国するため台湾の桃園空港にいます。なぜ台湾にいるのかというと、台南市で開催されたFabLearn Taiwan 2016での講演を依頼されたからです。私たちが昨年日本で開催したFabLearn Asia 2015に刺激を受け、台湾台南市のFabLab関係者が働きかけ、今回FabLearn Asiaの展開系として国際会議を実施してくれたという経緯があります。なんとも嬉しいではありませんか。

FabLearnTaiwan2016

現在台湾では、政権が変わっても台湾政府がMakermovementを後押しする動きがあり、FabLabやMakerSpaceの設立が各地で積極的に行われています。行政の後押しは、文脈を履き違えたり、アプローチ方法や人選を間違えると、逆に良い動きに悪影響を及ぼしかねないのでどのようなチーム編成で実施されるのかなどの実施体制や進め方にはとても配慮が必要になります。これは、日本でも同じことが言えますね。

一番わかりやすく失敗の確率が高い支援方法だと、3Dプリンタやレーザーカッターなどの機材購入費を補助し、短期間でFabLab的な施設を開設し、広さや機材の数、実施したワークショップや動員した人数を成果とするという政策が多いです。支援終了後の資金的な持続可能性がなく、結局活動が終了するという事例は国内外でも多く見られます。台湾でも施設設立支援だけでは不十分ということは関係者も理解しており、技術や運営のスキルのノウハウをきちんと実施者も考えていかないとダメだという状況が、今回の会議が実施された背景としてあります。海外からの出席者は、タイでFabLab@Schoolプログラムを進めるNalinさんと、FabLearn Asiaを開催しFabLabでの活動を紹介してほしいということで依頼があった私の2名でした。

FabLearnTaiwan2016_03

フリーディスカッションの様子:タイでFabLearnの取り組みを進めるNalinさん

日本では考えにくいのですが、台湾では公立の高校内にどんどんFabLabが立ち上がっています。これは、台湾政府がトップダウンの政策として予算が割り当てられ、半強制的に行われています。現在、13箇所の公立高校にFabLabが設立されています。(厳密にFabLabかというと、まだその段階にはいっておらず、機材を設置したMakerSpaceという意味で使っている感じが強いです) 年内には、30箇所を目指すスピード感でプロジェクトが動いています。日本国内では信じがたい速さです。いずれにしても、現場の教員はどうすればいいのか、と本気で考えないといけない状況ということです。なので、かなり前のめりで自分事な先生方が集まっていました。日本だと「プログラミング必修化」にともなう議論が盛んですが、台湾ではすでにそれがより総合的なスキルを持った「FabLab」 もしくは 「Maker」という位置付けになっているという状況です。

FabLearnTaiwan04

午後のテーマごとにわかれたセッションの様子

「FabLab」もしくは「Maker」が意味するのは、3Dプリンタのみならず、レーザーカッター、CNCミリングマシンなど複数のデジタル工作機械を使いこなし、プログラミングなどもその一部として行うという総合的なデジタルものづくりのレベルの話をしているとこうことになります。Internet of Things (IoT)時代を担う人をどう育てるかを考えたときに、2Dデザイン、3Dモデリング、プログラミング、プロジェクトマネジメント、プレゼンテーション能力など領域を横断し、まとめあげる複合的な能力がどの分野でも必要になります。学校内に、FabLab的な施設を設立するということは、そうした基礎的なデジタルを介し異分野を総合的に学習すること意味しています。

FabLearnAsia05

Fabercise

ちょっとブレイク:FABLAB国際会議で恒例となっている会議の前のリフレッシュ体操(私も予期してなかったのですが、あの妖怪体操をみんなで行う)

 

日本で活動していて思うのですが、そもそも日本の教育の文脈にFABやSTEMを置き換えた際に、はたして理科離れや問題解決型人材育成といった位置付けで良いのか。この問題は、いつも考えさせられます。実は、すでに日本の理数系の学力レベルは、15歳までは世界でもトップレベルです。むしろ日本で考えなくてはいけないのは、なぜ15歳までなのか、それ以降はどうなるのか、大学進学のために「学習」するのではなく、学習者はどの領域でその才能を開花できるのか。各個人の才能を開花させるのに大学は有効であれば、大学で何を学ぶかを早いうちから考え、学校で学ぶことが社会とどのような結びつきがあるのかを考えること。そして、どうしたら社会全体でそうした才能を見出せる創造的な学習環境を学校と社会全体で構築できるのかなのかだと思うんです。描く未来とはそもそもどのような社会なのか、各個人や施設の役割をマッピングしていき、それぞれの強みを活かす配置をすることで役割が見えてくるのだと思うのです。もともと私が建築、環境デザインや都市計画を学んでいたので、こうした視点になるのかもしれないのですが、どうしても日本だと軸のない局所的な取り組みが、実施者の判断のブレや迷いを生んでいる気がしてならないのです。

FabLearnTaiwan2016_01

行政、教育関係者のみならず、FAB施設運営者など200名以上が集まる会議となりました。

FabLearn Taiwanでは、そうしたアジア独特のシステムもある中で教育現場での教え方のメソッドやカリキュラムがどうあり得るのか。生徒の行動変容のみならず、地域や企業の方が「つくる」ことでどのように変化しているのか。FabLabが学校にある場合の活動事例、民間のFabLabの事例、公的なFabLabと民間のFabLabやMakerSpaceとどのような関係を築けるか、そのノウハウをどのように共有していくのか。注意すべき点などどこにあるのか。お互いの強みを活かしていくために、何をすべきかという議論をすることができました。まだまだ始まったばかりの議論ですが、こうした考える思考の回路がそれまでなかった方々の中にできただけでもすごいなと身を持って感じています。

FabLearnTaiwan2016_02

台湾やタイの関係者の話は、日本の制度にがんじがらめになりそうな私の心をほぐしてくれ、もっともっと目線を高く広く持つことの大切さを教えてくれます。これこそが日本の外へ出て自分で情報を取りに行く醍醐味なのだと心から感じます。日本だと教育の話は教育者だけ、技術は技術関係者だけ、経営は経営関係者だけ、など各分野ごとに人の所属も分かれてしまい、同じ興味を持った人としか話をしなくなってしまいがちです。ある一定の領域の知識を深める場合は有効ですが、社会的に新しい価値を生み出していきたいということであれば、逆にゆるやかな別の領域の方々とつながることが必要になります。なので、日本で開催した国際会議を「FabLearn Japan」ではなく、あえて「FabLearn Asia」としたのもそうした想いがあってのことです。「制度が違うから」「国が違うから」ではなく、「こうしたやり方もあるんだ!」「いつか、国境を越えて一緒に何かしよう」と出席した方が思えることが何よりも大切なことです。台南市の教育政策を担うトップの方々の未来へ向けた意思のある言葉がとても印象的でした。行政も、失敗を恐れず前例をつくっていこうとするパワフルさを感じます。

「今起こっているMakermovementと学校での新しい取り組みを接続し、どのように地域と連携できるか。私たちも答えを持っているわけではない。だからこそ、たくさんの方々と実践しながら可能性を探っていくのです」

台湾は、台湾なりのスピードとスケールで未来への準備を着々と進めています。日本も日本なりに考えていかないと、あっと言う間に世界の流れから取り残される気がしてなりません。今回、こうして台湾の状況を関係者から直接聞く機会ができ、現場に行ってわかることがたくさんありました。

今回、私が感じたことはごくごく一部の出来事です。もちろん、日本の視点から考えると良い点もそうでない点もたくさんあります。それでも、わからないなりにも未来に対して投資をし、精一杯模索している台湾の取り組みに私たちが学ぶことは多くあります。

まだまだ伝えたいこと、議論したいことがたくさんあり、書き切れないので、今回のFabLearn Taiwanの報告会も兼ねて、6月4日(土)にこれからの学習について考えるイベント STEM LEARNING EVENT No.1  を開催しますので、お時間ある方はぜひお気軽にご参加ください。いろいろお話しいたしましょう! たくさんの素敵な方々に、お会いできるのを楽しみにしております。

台湾桃園空港にて

渡辺ゆうか

6月4日(土)  お申し込みページ >> STEM LEARNING EVENT No.1  

STEM

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中