【鎌倉研修日記 vol.11】

北海道栗山町地域おこし協力隊の土山です。

  11月、12月にかけて巡ったFABスペースのレポートを3回に分けてお伝えします。この2か月間のフィールドワーク研修で栗山町に新たに作るファブスペースをどのような方向で運営すべきか、施設運営に携わる皆さんにヒアリングする日々です。

訪問した際に、皆さん口を揃えて『Fabスペースの運営は難しい』言うので、最初は漠然とした不安が大きかったです。また、2018年まで上昇傾向だったFabスペースの新規立ち上げが今年に入って下降をはじめ、約30件のスペースが運営を終了しているということです最近FabLab関係者や他のファブスペース運営者のところに大学関係者や行政の方が訪問し、新規Fabスペースの立ち上げを相談されることが多くなっていると言います。Fabスペース数は全体を通して減少していますが、地方ではまだFabスペースを設立する意味やニーズがあると感じました。相談者に対して運営者多くは『Fabスペースとして生き残るためには地域性に特化した運営をする必要がある』とアドバイスするそうです。来年FabAcademyを終え栗山に戻った時には改めて町民の方と話し合いながらFabスペースの運営方法を模索しようと思います。

それでは、12月に巡ったFABスペースを3回に分けてご紹介いたします。

今回ご紹介する施設は、下記の3つのFabLabになります

FabLab関内

FabLab世田谷IID

FabLab平塚

ファブラボ関内

ファブラボ関内_01

 FabLab関内は2013年に開催された世界FabLab会議(FAB9)をきっかけに誕生したスペースです。NPO法人『横浜コミュニティデザインラボ』の一角を借り受けて営業しており、シェアオフィス『さくらWORKS』とも連動しているのが特徴的です。平日会員/休日会員の種別があり、ほとんどが休日会員として土日に利用しています(一部の会員さんが平日、土日合わせて使用したいということで、特別なトレーニングを修了した方には利用を許可しているそうです)。

ファブラボ関内_02

FabLab関内の内部は、廊下のようなレイアウトになっている。右側が3Dプリンター、切削加工機、ミシンが置いてある作業スペース。左側が会員さんやスタッフが作ったサンプルが並べられ、ディスプレイを挟むようにロッカーとして荷物を保管できる場所が設けられていた。

 男性会員が20名、女性会員が10名と男女比に偏りがあるのですが、施設の印象として電子工作系の展示物が多く、店内の雰囲気もガレージ(作業場)っぽいので、男性会員が多くなるのかなと感じました。また、利用者の中にブロックプログラミングソフト『スクラッチ』や3Dプリンターについての本を書いている方がいるなど、パワーユーザーが多数在籍することがコミュニティとしての付加価値が高いように感じました。3ヶ月に一度、会員同士の成果発表会ではお互いに成果物に対してフィードバックをもらえる有意義なイベントのようです。『毎日作っている様子は見ているんだけど、組み上がって最終的な形を見ると改めて感動する』ということからも、Fabスペースのコミュニティづくりには発表会のようなイベントを設けた方が会員同士の深い交流が生まれるとのだと感じた。

ファブラボ関内_03

FabLab関内のサンプル群。電子工作系のワークショップが盛んに行われているので、それらのサンプルが多い印象。また、アクリル二層版の店頭販売も行なっているのでそれを活用した製作物もあった。MDFを格子状に切り抜いてクロスステッチ刺繍をしているサンプルはFabLab MAYAからの見学者がきた際に置いていったものだそう。

 FabLab関内の代表を勤める田宮さんは、2017年にFabAcademyを卒業し1年間FabLab Kamakuraでのインストラクター研修を経て、2019年からFabLab関内で開催しています。田宮さんがプログラム受講から3年間でインストラクターとしてFabAcademyを開催しているので、僕も3年間の準備期間後『FabAcademy 2023』を栗山町で開催できればと思いました。

ファブラボ関内_04

FabLab関内の設備。3Dプリンタ=4台(daVinch mini/L-DEVO/MakerBot他)・レーザーカッター(UNIVERSAL)・アクリル販売用資材・サンドブラスター・コンプレッサー・切削造形機・ミシン(JANOME)・NC旋盤・フォトブース・電子部品などフォトブースはその場でしっかりした写真が撮れるので人気の機材らしい。黒の背景紙が1番人気。アクリルの商材は株式会社ユー・イー・エスが販売する「LEM」シリーズ。FabLab関内ではアクリル二層板を販売している。

 田宮さんが『FabLabを名乗っていると海外からの見学や訪問が多いのも特徴で、1つの共通言語があればすごくスムーズにお互いに話ができるのがいい』と仰っていて、これから新しいFabスペースを作るときに他のスペースと連携したり、海外との交流があったり、運営をしていく上で必要なコミュニティを作ることができるのが『FabLab』の良さのように感じました。

 

ファブラボ世田谷IID

ファブラボ世田谷_01

世田谷ものづくり学校の入口。FabLab世田谷がある「世田谷ものづくり学校」は、池尻中学校を改装しているシェアオフィスなので住宅街のど真ん中に位置している。訪問時、グランドにはサッカーをする小学生がいるなど、学校の授業でも使用されている。

 FabLab世田谷は廃校となった旧池尻中学校を改装し、ものづくりに携わる事業者がシェアオフィスとして利用する複合施設『世田谷ものづくり学校』の中にあるFabLabです。もともとは同施設内のFabスペースとして2014年にオープンしましたが、2016年4月にFabLab Setagaya β(ベータ)として『世田谷につくるFabLabとは何か』を模索し、同年8月に開催された世界FabLab会議(FAB12)に参加し正式に『FabLab Setagaya』として活動を始めました。

ファブラボ世田谷_02

FabLab世田谷の入口。入口前にはここで作られたサンプルが並べられはじめて工作機械に触れる人にもどんな物が作れるのかがわかる。また入居する他のデザイン事務所と共同または委託で製作したサンプルも並べられていた。

FabLab世田谷では3Dプリンターを利用する高校生以下を対象にした利用制度以外は月額制を設けておらず、工作機械の利用は全て日額利用です。「会員登録(¥1,000)+マシントレーニング(無料)+レーザーカッター利用(45分=¥2,040))」という値段設定なので他のFabスペースよりも安く利用できるのも特徴的です(世田谷区の教職員、学生は使用料金25%オフ)。

ファブラボ世田谷_03

FabLab世田谷には、工作機械が左右に配置されていて手前側に作業台がある。作業台の下にも工作機械が収納されていた。レーザーカッターの集塵は外に排気されている。

またものづくり系のシェアオフィスを生かしたワークショップなどが定期的に開催されていて、1年間で700回行われるイベントには約10万人の参加者が集まるそうです。また、造形請負・出力サービスには一般のユーザーだけでなく、企業やクリエイターからも受注があり、特に3Dプリンターを使用したオーダーが多いため6台のプリンターが導入されていました。(代表の鐘居さんのオススメの機種は『RAISE3D N2(積層造形機)』と『Form2(光造形機)』)。

ファブラボ世田谷_04

FabLab世田谷の所有図書。代表の鐘居さんが元々Web系の出身ということもあってその頃の本がかなり置かれていた。またFabLabということで田中先生著の本やデザインに関する書籍も多い。3Dプリンター、レーザーカッター、UVプリンターで作られたサンプルがたくさん並べられていた。委託事業で連携する企業のサンプルも並べられていた。

 国内でも先進的な事例を展開する世田谷ものづくり学校の『顔(オープンスペース)』として、国内外からたくさんの見学者が訪問されるそうです。行政の方が施設見学にいらっしゃり、そのままFabスペースの立ち上げに繋がったのが『FabLab燕三条』と『隠岐の島ものづくり学校』です。このようなコンサルタント業務なども行なっていて、10月にはインドネシアの国立大学の教職員向けにFabLab立ち上げのための研修を行った事例も紹介していただきました。

ファブラボ世田谷_05

FabLab世田谷の貸出機器。3Dプリンタ、MUTOH MagiX MF-2200D、Raise3D N2S、Ultimaker 3、Afinia H800、カッティングマシーン、Graphtec Craft ROBOCALL CE5000-40-CRP。レーザーカッターSpeedy300、 UVプリンターMinaki UFJ-3042HG、切削加工機 KitMill RD420、光造形機Form2。

世田谷区との取り組みも印象的で、『産業振興・地域交流・観光拠点化』を目標に行政と連携しています。特に面白かったのが『世田谷ものづくり企業探報』というWEBマガジンを通して地元の企業の魅力を発信し、取材を通して交流を深めていることです。「FabLabとして『工作機械利用・委託サービス・イベント開催』するだけでは運営は厳しい」。FabLab世田谷は小学生向けのワークショップを数多く開催し、それを繰り返し続けていくことで『夏休みの自由研究=世田谷ものづくり学校』というイメージを作り上げていったそうです。鐘居さんから『とにかく続けること』『地域性を出すこと』『地域に密着しコミュニティをつくること』がFabスペースの運営で大事なことだと教えていただきました。

 

ファブラボ平塚

ファブラボ平塚_01.png

 FabLab平塚は神奈川大学経営学部の道用准教授が2014年に立ち上げた『KU Fab Studio』から始まったFabスペースです。道用先生がキャンパス内にものづくり施設を立ち上げようと思ったのは、2013年に出版された『FABに何が可能か』という本に出会ったのがきっかけだったそうです。道用先生が当初授業の中で感じていたのは、学生たちが課題の中で提案する商品の実現性の低さや説得力のなさでした。しかし、3Dプリンターやレーザーカッターを授業に導入したことで、学生が自ら商品を設計、開発することができるようになりました。

ファブラボ平塚_02

FabLab平塚は、校舎の2Fのもともと廊下だったスペースをFabスペースに改装している。机や椅子は学生たちがDIYしたもの。エアコンが設置されていないため夏はかなり暑くなるという。スペースに対して学生数や機械数が多いためかなり密度の高い状態になっている。

当初は『作って遊ぶ』ことがメインのものづくり活動だったのが、現在では環境問題や地域交流のために学生が主体となってプロジェクトを行うスペースになっています。2016年FabLab平塚としてオープンしてからは学外からの利用者も増え、外部との接触が少なかった学生にとって刺激になっているということです。

ファブラボ平塚_03

会員登録。FabLab平塚では利用者数を記録するために会員登録を最初に行い、以降は入室時に会員番号を入力してから工作機械を使用させている。

 FabLab平塚では8(学生):2(一般)の割合で年間1000名の方が利用しています。工作機械の使用料は無料(素材持込)で、各種トレーニング、メンテナンスは学生主導で行われています。学生が課題やそのほかの活動で製作したものは『Fabble』の中で公開されていて、黎明期のFabスペースの様子、徐々に問題意識の芽生えた学生たちが製作する様子から成長が感じられとても面白かったです。(現在FabLab平塚では、場所の問題や授業課題の兼ね合いから積極的に広報活動は行なっていないそうです。)

ファブラボ平塚_04

ファブラボ平塚内観

ファブラボ平塚_06

かつての学生がプロジェクトで廃材から作った下駄。実際に建設現場に赴いて廃材をもらい加工したそう。右側は布と漆を用いて木材に装飾を施したもの。

 

上記3つのファブラボだけでも運営形態や活動状況、ユーザーもそれぞれ異なります。実際に自分たちで足を運ぶことで発見することも多いです。

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