【鎌倉研修日記 vol.13】

北海道栗山町地域おこし協力隊の土山です。

3回に分けて掲載しているFABスペースフィールドワークのレポート。最後は、日本ではまだ始まったばかりの取り組みですが、欧米諸国ではどんどん進んでいる「図書館 x FAB」の可能性をいち早く取り入れている2つの学校を訪れました。

日本初の図書館 x FAB スペース

慶應義塾大学湘南キャンパス メディアセンター 

SFCメディアセンター FabSpace 紹介映像

慶應大学SFCキャンパス(通称:SFC)への訪問は、大学生達と一緒のバスに乗って向かいました。小田急線湘南台駅から10分ほどで森の中に囲まれたキャンパス群に到着。僕の母校「札幌市立大学芸術の森キャンパス」を想起させる環境に懐かしさを感じました。このスペースは2013年4月に『全学生が日常的に触れられる場所に3Dプリンターがある』をコンセプトに同大学の田中浩也准教授(当時)が発起人となり、大学内にFABスペースが作られた国内初となる事例です。当時アメリカでは公立小学校にこのようなFABスペースが設置されるブームがありましたが日本ではまだ馴染みの薄いなか、慶應SFCでははじめに『Cube』を4台導入し、学生が課題製作で使用することに限らず、趣味や友人へのプレゼントを作るためなどにも活用されていました。

 図書館内のAV機器の貸出業務や返却図書の整理などで学生アルバイトを起用しており、このスペースができてからは『ファブマスター』という認定制度を設けたアルバイトシステムが誕生し、学生が学生に工作機械の使い方をレクチャーする流れが生まれたそうです。現在ではレーザーカッター、UVプリンター、刺繍ミシン、職業用ミシンなども加わり、より広い範囲のものづくりができるスペースになっていました。また3Dプリンター(MakerBot)も15台にまで増え毎日誰かが利用しているそうです。しかし、図書館という公共スペースの中にあることで工作機械の使用に制限がありました。レーザーカッターの場合、大学側で用意しているアクリル、ベニヤ板(無料)のみで持ち込み素材は加工できません。また、3Dプリンターは匂いの少ないPLA樹脂に限定されています。このような制限が一部ありますが、全ての工作機械の使用料と材料費は無料なので多くの学生が気軽に利用できており、より深い加工やプロトタイプ製作をする場合には研究室内の工作機械を使いにいくそうです。

SBC

Student Build Campus WEBサイト

 大学内の敷地を利用して学生、教職員、OBOGが共同で宿泊やイベントスペースとして活用可能な建物を活用していくプロジェクト『SBC』(Student Build Campus)の事例も紹介していただきました。このプロジェクトでは建築学部の学生が製作した図面や模型をもとに建築会社と共同で滞在棟を2棟完成させており、実際の滞在型イベントで使用されていました。また現在も新しい滞在棟が建設中でより発展的なプロジェクトが行えるような計画が進んでいるそうです。建築や製品のデザイン提案に留まらず、実際に出力または実装できる環境が身近にある環境は、学生にとっていい経験になると感じました。

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工学院大学付属中高等学校 / FABスペース

工学院_01

工学院大学付属中高等学校 外観

 工学院大学付属中高等学校の図書館には2018年にオープンしたFabスペースがあります。学校教育として『ICT化』を推進しているということから、図書館に3Dプリンターを導入したのがきっかけでした。案内してくれたのは、Fabスペース担当の国語教諭/図書館司書でもある有山先生。当時、図書館のスペースの大半を『書庫』が埋め尽くしていたそうで、『このエリアをもっと有効活用したい』と以前から考えていたそうです。そこで2018年1月に図書館の改装をはじめ、4月には学生がより自由に図書館を利用できるスペースになったということでかなり急ピッチで大変だったそうです。

工学院_02

図書館内Fabスペースは、木のぬくもりを感じる空間構成になっている。道具箱はカラフルに色分けされている。

 普段は総合学習の時間に『デザイン思考』という授業で活用されており、学生は情報リテラシーの育成をメインに『アイデアを形にする』プロセスを学んでいます。また、学生全員がタブレットを持っているので『iMovie』や『Adobe Premia』を使って動画編集した作品制作や電子書籍の発行などをしていました。この『アイデアを形にする』授業の一つとして3Dプリンターを使っているそうです。

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左) 学生がAdobe Illustratorで作成したファブスペースのポスター。中央) Adobe Illustratorで作成したSVGデータをFusion360でモデリングする方法を使って両方のソフトウェアを学べるマニュアル。右)Fusion360の講習で作成するキーホルダー Fusion360の最初のモデリング講座で生徒たちが最初に作る作品。

 現在約30名の学生が、放課後などを活用して自主的に3Dプリンターや3DCADソフトをつかってプロダクトやモデリング制作を行っています。下は中学2年生、上は高校1年生(Fabスペース1期生)ですが、Fusion360やAdobe After Effectをかなり使いこなせる学生がいます。中学2年生ながら、まだ発売されていない相鉄線のプラレールを制作している学生や、戦艦のモデリングをする学生がいたのに驚きました。高校生はFAB3Dコンテストで入賞した学生もいて、彼らは『3Dプリンターだけではものたりない。レーザーカッターも使いたい。』と言っていたのが印象的でした。

工学院_04

南武線の電車をモデリングする中学2年生の彼は、プラレールが大好きでまだ発売されていない南武線の電車をモデリングしていた。窓やドアまで忠実に再現している。プラレールにしっかりとはまるように設計していた。

もともと学校として『アイデアを形にする』『デザイン思考』といった授業を取り入れていたからこそ、機材を使ってものづくりをしたいと思う学生が多いのかなと思いました。そして、FAB 3Dコンテストなどの発表の場があることや、周りにいる友人たちがモチベーションとなりスペースの活性化に繋がっていると感じました。私立学校ということで運営的に難しい部分もあるということですが、最近出がコンテストに入賞する学生などが増えてきたことから周囲からの評価が変わってきたということです。

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出力した南武線の電車の3Dプリント。3Dプリンター特有の積層痕がきれいに見えるように出力方法をいろいろと試行錯誤したそう。色がついているのはエクセルで色分けして制作したシートをシールにプリントしたもの。

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有山先生特注の本棚とテーブル。テーブルは通常のサイズよりも少し大きめに作られているため、3Dプリンターを置いても広く作業できる。モニターも使用しないときはカーテンを降ろして目隠しできるように設計されている。

 

色々なFABスペースを巡りましたが、まだまだユニークなFABスペースはたくさんあります。運営もそれぞれ。レポートを通じて、全国のFABスペースを実際に訪れるきっかけや新しい気づきになれば嬉しいです。

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