【鎌倉研修日記 vol.22】

ファブアカデミーでは、毎週新しいスキルを学んでドキュメンテーションをしていきます。そしてそれらのスキルを活用し、最終制作を行なっていきます。特徴的なのは、初期の段階で受講生は最終的に作りたいものを構想することです。何かを学んでから作るのではなく、最初に作りたいものがあるという逆算の方法です。これは受講生それぞれのモチベーションを向上させ、プロジェクトマネジメントを身をもって学んでいくためでもあります。鎌倉研修の一貫としてファブアカデミーを受講している北海道栗山町の地域おこし協力隊は、どんな作品を考え、どのような事を学んでいるのでしょうか。

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ファイナルプロジェクト用のスケッチ。縦長だったため上と下で切り分けて掲載する。農道脇に杭のようにさす形で使うことのできるマイクロコントローラーとセンサーのキットをアイデアとしている。主に4段構造で、最上部に電源供給するソーラーシステムとセンサー類を制御するマイクロコントローラーと外部との通信を行うコンピューターを内包し、中間の2段は取り換え可能なセンサーなどのキット、そして最下部は地面に差し込むための杭状の構造となる。センサー類の取り換えやすさを意識し各パーツはねじ式の着脱を考えている。

協力隊の一人である岡さん。現時点で考えているファイナルプロジェクトは、屋外で使える通信可能なマイクロコントローラーと簡単に付け替えることのできるセンサーなどのキットです。栗山町の屋外に広がる広大なスペースがとても印象に残っており、そういった場所で活かすことのできるモノをこのファブアカデミーを通して制作していきたいと考えているそうです。

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受講生は、それぞれ個人のWEBサイトを構築していく:岡さんのWEBページ

FabAcademy 2020 Yuki Oka

2020年2月1週目_写真6_週の課題の成果を発表するページ

最初に週の課題の成果を発表するページを作成する課題が出され、各受講生は自身が作成したWEB サイトに毎週の課題がAssignmentというディレクトリ上で公開していくこととなる。

ファブアカデミー2週目では、コンピューターを使った作図の学習を行いました。タイトルになっているComputer-Aided DesignはCAD(キャド)と略され、日本語に訳すとコンピューター支援設計という言葉になります。CADは入力された数値を正確に図面におこしたり、それを3Dモデルにしてくれたり、またはその逆で3Dモデルを2Dの図面におこしてくれたりするシステムです。つまり人間がコンピュータの計算能力を借りて作図することができるというのがCADの概念なのですが、CADという名前のソフトがひとつ、ドンッ、とあるわけではなく例によって数多のソフトが存在し、それぞれが違うインターフェースを持ち、使い勝手が全く異なるというのが実情です。今回の課題は前回アイデアとして出した自分のファイナルプロジェクのスケッチを描き直すということでしたが、同時に様々なソフトウェアを実際に使用し、CADを理解し、それに慣れつつ、自分の使いやすいソフトウェアを見つけるということがテーマでもありました。

講義の中でニール教授がいくつかオススメのような形でソフトウェアを紹介してくださっていたので私はそれらを中心に、ソフトウェアの選定を進めて行きました。ニール教授が積極的に紹介してくださるソフトウェアは主にフリーソフトで世界中の人々が無料で使用することのできるものが多く、ファブラボの理念に基づいたものになっています。特に3Dモデルを作成するためのソフトウェアは使用料が高額な場合が多いので、こういった無料で使用できるソフトウェアの存在はとても重要です。

本来CADソフトというと入力した数値に基づいて正確な図を描画するものですが、今回は便宜上CADという言葉のもとコンピューター上の描画にまつわるソフト全般についての学習を行なっています。前述した通り、CADソフトには様々なものがあるので、使用用途や欲しいデータ形式に基づき使い分ける必要があります。今後ファブアカデミーにおいて、私がCADを使う際の主な使い道としては写真の加工を行う、平面のイラストを描く、立体のモデルを制作するというあたりが多くなることが予想されます。

2020年2月2週目_写真1_GIMPのズーム時

GIMPでイラストをズームにした様子。ラスター画像の場合ズームにするとピクセルがはっきりと見える。斜めの線を構成するのに濃いピクセルと薄いピクセルを並べていることがわかる。

まずは写真の加工を行うためのソフトウェアということで、これはラスターという形式のデータを扱うことになります。画面に表示されるラスター画像は小さい点(ピクセル)の集合体によって形成されています。ピクセルのデータを編集することで画像の見た目を変更していくのがラスター画像編集用のソフトウェアの役割です。ラスター画像はビットマップ画像という呼び方もします。特に有名な編集ツールとしてAdobe Photoshopというものがありますが、今回はニール教授がおすすめされていたGIMPという無料で使えるソフトウェアを使用しました。個人的にPhotoshopは使ったことがあったのですがGIMPは簡単な使い方をするのであればほぼ同じように使うことができるといった印象を受けました。最近Photoshopはかなり高度な画像加工が可能となっていますが、そこまで求めなければGIMPは十分の機能を持っていると言えると思います。

次に平面のイラストデータですが、ピクセルを順序立てて並べ描画するラスター画像とは違い、座標などの数値データを扱って、点や線を然るべき場所に直接表示し、図形などを表現していくベクター画像を編集するソフトウェアを使用しました。ベクター画像はズームすると段のような形になっているラスターの曲線とは違い、とても滑らかな線になっていることが特徴です。これはベジェ曲線と呼ばれ、制御点と呼ばれる複数の点を配置していくことで描くことのできる線が滑らかな線を描画する仕組みで、それに必要な複雑な計算を視覚的に処理してくれるというのがこの種類のソフトウェアの大きな役割の一つです。有名なソフトとしてはやはりAdobeのIllustratorというソフトが挙げられますが、ここでもおすすめされたそれに近しいフリーソフトであるinkscapeというものを試してみました。Inkscapeはmacの上では直接動かないので起動させるためにXQuartzという別のソフトウェアを起動させなければいけなかったり、またそのせいかコマンドが少し複雑に感じることが多々ありました。ただGIMPと同じで必要最低限なことを無料でできてしまうので、ファブラボのような理念をもつ団体であれば積極的に使用していくべきソフトウェアであると感じました。

2020年2月2週目_写真7_

Inkscapeで手書きだった構造図をベクター画像としてで書き直したもの。正確な楕円と直線の組み合わせになったことで、ハッキリとしたイラストになり、手書きのものよりもわかりやすくなった。場合によっては3Dモデルよりも2Dの方がわかりやすいこともあるとのことだった。

最後に3Dモデリングのできるソフトウェアの使用を行いました。まず平面で図形を描いてそれに高さを設定してその分を押し出し、立体的な形にするというのが基本的な3DCADの仕組みです。図形を成す各線分の数値を詳細に決めて、正確な設計をすることが可能であるというのが最大の特徴です。

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GIMPを使用して先週提出した手書きのアイデアスケッチに色をつけていった。ソフトウェア内に様々なツールが用意されていて、いろんな毛先のブラシを使用したり、太さを自在に変えたり、指でぼかすような技法を混ぜたりと、実際に手で絵を書くような感覚で色をつけることができた。

そんな3DCADですが、グローバルセッションの講義においてニール先生自ら操作し熱心に説明してくれたのがFreeCADというフリーソフトです。普通であれば高価なソフトウェアがタダということで機能についてはあまり期待せずに説明を聞いていたのですが、実際にこれもできる、あれもできると動かしてくれる様子をみて衝撃を受けました。

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FreeCADを操作している様子。左の画面では数値を設定してその数値を右の描画画面に連動させている。右の画面は直方体を真上からみた図で、そこにさらに円柱状の穴を開けようとしている。

そこで翌日自分でも試してみたのですが、個人としては操作が難しいと感じ、なかなか観たようにはいかなかったので、使用するのは諦めました。そこでもう一つ個人利用として使うには無料で使えるツールFusion360を使用して課題を進めることにしました。こちらはファブアカデミーが開始される前にファブラボ鎌倉で開催していただいたプレ講座等で馴染みがあったのですぐに制作にとりかかれました。

他にもいくつか試してみたソフトウェアはあるのですが、今回はGIMP、Inkscape、Fusion360を主に使用してファイナルプロジェクトのイメージを作ることにしました。GIMPでは以前描いた鉛筆のスケッチに色を追加し、Inkscapeでは綺麗な線状のイラストとして全体像を描き、Fusion360ではそれらのアイデアを実際に3Dモデルにしてみました。今回こうしていろんな形でアウトプットしていくことで、最初のアイデアスケッチでは考えつかなかった細部の構造の必要性に気づいたり、ユーザーの利用方法を想定できたりしました。アウトプットはとてもエネルギーのいる作業で時間もかかりますがそれによってぼんやりとしていたアイデアが少し明確になったように思えます。

2020年2月2週目_写真8_

Fusion360で作った3Dモデル。制作した複数のモデルを一つのワークスペースに集めジョイントで接続した。画像は最大限に分離し、外側のケースと内側のケースも見えている様子。素材のテクスチャを貼り付けて、最終的な造形をイメージしやすくしている。

ただ、今回のアウトプットだけではまだ全然足りないということも同時に理解できたので、そこはまた今後のファブアカデミーで補っていきたいと思います。

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