STEM MEETING No.2

「共有」をテーマに、第2回のSTEMミーティングを開催しました。プログラミングやデジタル工作機械など手法のみが注目される中で、私たちは学習者にとってよりよい学習環境とは何か、これまでにない可能性を引き出すためにSTEM教育のあり方を模索しています。ファブラボ国際会議FAB12のレポート、深圳という街を環境装置として捉え、STEMを繋げることで見えてきた風景がありました。

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今回のテーマである「共有」とは、どういうことか。それは、オープンにこれからの教育を考えていくとこうことは、学習者、教育関係者、保護者、ファブ施設運営者、Makerなど全ての方々とゆるやかに関わりながら、未来を考えられる手段と捉えています。STEM教育を考えていく上で,「共有」「派生」「改造」に支えられた「Fabble」とFAB12(ファブラボ国際会議)が開催された「中国深圳」の両者にみられるスピリットは極めて重要です。第2回STEM MEETINGでは,Fabbleが重要視する指針と,FAB12のレポートを通して、あらためて「共有」「派生」「改造」について考えていく機会となりました。

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Fabbleとは、「Fab」プロジェクトのための、オンラインのドキュメンテーションサービスです。

 

なぜFabbleが生まれたのか?

 0を1にすることがクリエイティビティだと考えることもできます。それができている人は「すごい」です。一方で、Fabbleは,100から自分なりの、自分がやりたい「1」を生み出す。そんなネットワーク化されたクリエイティビティをサポートしているサービスと言えるかもしれません。Fabble開発者の赤塚さん、大島さんにオープンソースの文化について語っていただきながら、Fabbleでこれまで行ってきた活動を踏まえ、これからの「共有」のあり方を考えるのが今回の大きなテーマでもありました。

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Fabbleでは、「アクセスと使用」「再配布」「複製と改変と派生」「さまざまな貢献」の4つの循環を通して、N次創作的に「派生物」がつくりあげられていることを支援しています。これは、「誰かがつくったもの」に「改造」を加えて,その連鎖がより品質をあげていくという考え方です。もしかしたら、今日の教育環境デザインや学校文化にはそれほど色濃く浸透していない思想だとも言えます。社会ではこうした流れが活発に起こっている中で、いずれ向き合わないといけない問題を先んじて取り組んでいる状況です。

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Fabble内で、1つのプロジェクトが改変され作成された派生図

 これまで、また現在も,例えば学校の先生は,誰かが考案した面白い授業案を自分のクラスの生徒向けに改変し、制作者へのオマージュを持ちながら,授業を実施することも考えられます。Fabbleは、そのような参加、改造、敬意を無理なく可視化してくれるツールにもなりえ、現に慶応義塾大学SFCでは、Fabbleを活用した授業も行われています。

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慶応義塾大学SFCで行われたFabbleを活用した授業 「オープンデザイン実践」

 今回のFabble発表で興味深かった点のひとつに、「オープンにすることとは,単にものをつくっていくことだけにつながるのではなく『ファン・コミュニティ』の構築にもつながる」という効果あるということです。Fabbleを通してSTEM教育を見つめ直すと、そこには(パッションに満ちた趣味的かかわり、とでも言うべき)「ファン(fan)」が人々の行動を面白く変える,という目から鱗の教育観がわき上がってきます。

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第12回ファブラボ国際会議 : 開催国 中国 / 場所 深圳市

 このことはFAB12が開催された「中国深圳」の文化にも色濃く現れています。深圳は,都市部の周辺部に秋葉原を大きくしたような工場地帯ですが、現在は「ガジェット天国」。路上の野菜販売のようなかたちで、電脳グッズが売られる。とにかく新しくて面白いものに飛びつく精神、それを自分なりに(自分の設けになるように?)改造し,派生物を生み出すことが、深圳の街の人びとの空気になっている。「安価なドローンの叩き売り(まさに路上に叩きつけて「壊れない」ことを証明する売り方)」「公道を安価なセグウェイや電動バイクで闊歩する姿」。実はガチガチの規制は多々あるのだけれど、その一方で守らない人も多い。(その結果,面白いものが世の中に溢れ出ているのであれば,これは日本のSTEM教育を考えるうえでも参考になるかもしれません)

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オープンエデュケーション

 Fabbleというオンライン(と実空間)、深圳という実空間(とオンライン空間)において,両者にとって重要なことは「メンター」「経験のある他者」によるサポートが存在していることが見えてきます。

 自分自身がつくりたいもの、もうけにつながりそうなもの、そういったものを、興味に衝き動かされてつくる感情がわき上がるには、「手助け」も環境に入れ込まれていることが必要です。Fabbleのレシピの数,そして質と量が見えていることは、人びとのつくる動機を賦活していく。深圳のどこにいってもガジェットや派生物が販売されている露天の環境もそうみてとれる。環境は,欲望の可視化装置となるえるのです。

 さらに、「派生物をつくる」ことを目指したFabbleベースの学習環境では、「どのように派生(改良)させたのか」が評価も含んだ目的になることも興味深い。「教授」や「評価」といった概念がいやおうなく再構築されることになります。このように考えると、STEM教育はじめ新しい教育環境デザインを考えていくことは、単に、あたらしいプログラムを埋め込んだり、道具を埋め込んだりするだけではなく、教育思想をFabbleしていく活動そのものなのかもしれません。

 

FAB12の報告、そしてハードウェアベンチャーが集まる深圳という街、これからの新しい教育のあり方を問うであろうSTEMを並べると、これまで気がつかなかった風景が見えてきたから不思議です。前半のプレゼンが終了し、後半は実際にFabbleを参加者が使用してアイデアソンを行いました。

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第2回のSTEM MEETINGの特徴として、進行管理やプレゼンデータ、紹介したWEBノリンク、議事録も全てFabbleに集約しています。詳細をご覧いただけます。

Fabble : STEM MEETING No.2

 

 

参加者は、高校生、大学生、教員、企業、NPO法人、保護者、ファブ施設運営者、アクティブシニアなど、それぞれの立場で、どのような活用法が考えられるか、実際にFabbleを使ってプレゼンしてもらいました。

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実践型のセッションを取り入れた第2回となりましたが、参加者も新しい情報をインプットし、頭をフル回転させ、そして短時間でアウトプットしていきました。オンライン上に、カリキュラムやサービスを掲載しても、実際にこうしてリアルに体験できる場があることでグッと敷居が下がり、現場でも活用してみたいという意識が芽生える。新しい価値を提案するには共通したことが言えるのかもしれませんが、こうした時間の積み重ねが不可欠なのかもしれません。

まだまだたくさんの方々に理解され、協力してもらい、社会全体で盛り上げていく必要がある分野だからこそ、実際にお会いしお話できる機会がとても貴重だとあらためて感じています。お忙しい中、ご参加いただきありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いいたします。

 

第3回は、12月11日を予定しています。ファブラボ鎌倉のWEBにて告知していきます。

 

本レポートを作成するにあたり、東京都市大学岡部准教授にご尽力いただき、作成することができました。この場を借りてお礼申し上げます。

 

渡辺ゆうか

 

 

 

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